2012/01/29

ノリとは何か?芸能自体が生き物なのだ。

・ リズムにおいて 実験)手拍子足拍子をみんなでやる(勝手にずれる部分観察)
・ 気分において 実験)気分を共有する 同じ仕事をする お灸をする 同じ物を食べる。
・ 切実な思いを共有する。自分たちの力ではどうにもできない事に対して祈るしかない状況。 実験)床の上に印をつける。お客さんの1人に、後ろ向きにモノを投げてもらって、それが印の上に落ちる事を祈る。
・ 目に見えない何かを共有する→★★★意識できる範囲を越えた何かがやってくる。★★★
・ 参考文献 ノル、ノリと読む漢字には、「乗る」の他にも「憲」「法」「典」「祝詞(のりと)」などがある。いずれもなんらかの規則に関連している。古代の祭政一致のまつりごとに関連していたことがうかがえる。『音楽する社会』小川博司より

2012/01/25

Individualとdividual


今回で四回目になる中間発表、実験をするのはいつもの事だが、ちょっとした問いの進展があって充実感を感じている。
今回は、前回と引き続き、STスポットのヨコラボ企画である、民俗芸能調査クラブと合同で、互いに互いのテーマをリンクさせながら、それでいて最終的にはかけ離れながら問いを深め合った。

手塚の興味に特化したメモを少しずつ示していきます。

2012年1月20日 「実験して、接近する」の為のメモ

近代化と共に「個人」という概念がやってきた。
個人はもともと日本にはなかった言葉で、英語では「Individual」「parsonal」

Individual (それ以上分けることができない単位)←→ dividual(分けることが出来る)という言葉は本来無いが、近代化以前の日本の領域あたりではこういう身体感覚で「自分」というものを捉えていたのではないだろうか?

「自分」という感覚について考える


Individual
自分が何をしても自由。どこに行ってもいい。
他の人と違うことを感じていてもいい。
自分の心配や痛みに関して、人に共有してもらえない。なぜならそれらは線引きされた自分という領域の内側のものだから。
人の心配や痛みに、一定の距離を置く。
して欲しいことと、してあげることの量を公平にする。
依存しない。やる仕事に見合うだけのお金をもらう。困っていても自分の力かお金でなんとかする。人が困っていても、物事から一定の距離を置いて、できることだけ助ける。公平さを守るために自分の欲求を主張し、戦う責任がある。

dividual
自分は何かの部分を担う。
自分が何かしたくても、コミュニティーの役割を優先する。
コミュニティーにとって役割のある時間には、自分の個人的な用事を入れない。
男と女の役割が離れている。コミュニティーの中で困っている人がいたら、必ず、できるだけ全面的にみんなで助ける。食べ物を平等に分ける。同じ食べ物をみんなで食べる(同じ釜の飯を食べる)。同じ飲み物をみんなで飲む。お金にならないコミュニティーの為の仕事をみんなで分け合ってやる。公平で合理的なことを望まない。心を交換し合うために、できることを努力し続ける。うらぎらない。

2011/04/26

中間発表vol.02 民俗芸能と3.11以降

Asia Interactive Researchとは、日本をはじめアジアのアーティストが相互に関わる事を目指し、去年から始動した民俗芸能および伝統芸能のリサーチです。国や時代の枠組みを疑い、枠組みをズラして観察する場としての「アジア」において、様々な現代のアーティストと交流し、それぞれの手法や視点から見た相互リサーチを誘発します。

今回は、予定していた中間報告に加え、未曾有の災害である3.11以降に生きる私達が、「今何が起きているか」を深く感じ、反応する試みにも挑みます。

1日目 映像天国~どっぷり浸かっていただきます~
日時|2011年5月21日(土)11:00〜19:00(出入自由)
出演|大澤寅雄、阿部武司(東北文化財映像研究所)

2日目 実験地獄~生きたいから反応する~
日時|2011年5月22日(日)14:00〜18:00(開場13:30/出入自由)
出演|手塚夏子、神村恵、捩子ぴじん、高嶋晋一

会場|小金井アートスポット シャトー2F
(JR中央線 武蔵小金井駅より徒歩5分)
東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2階

料金 |1日参加1,000円/2日参加1,500円(どちらもワンドリンク付き)
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1日目は、発案者である手塚夏子と共に国内民俗芸能リサーチを撮影、観察し続けた大澤寅雄が、これでもかと言わんばかりに、その記録映像を浴びせますので、どっぷり浸かっていただきます。
※ アジアのジャンクフードを販売します。ロビーで食べられます。

2日目は、悪魔のような実験を繰り返す実験ユニットが、「起源の古い民俗芸能の世界」と「3.11以降の世界」との間を行き来し、
反応する自身を対象化します。
※ 過去の実験は↓「匿名的断片」2008年6月14日〜15日
http://tokumeitekidanpen.web.fc2.com/

濃厚な映像と実験の2日間をお見逃し無く。

タイムテーブル|

5/21 (土) 天国編
11:00~12:00 芸能の形態①|舞楽、延年、風流
12:30~13:30 芸能の形態②|祭り囃子と二人立ち獅子舞
14:00~15:00 ケモノたちへの共感と慰霊|一人立ち三匹獅子舞
15:30~16:30 賤しきもの、怪しきもの|風俗としての芸能、韓国のクッ
17:00~19:00 3.11と民俗芸能|東北に受け継がれてきた民俗芸能
(時間帯と内容には変更の可能性があります。また、ゲストを予定しておりますが
決定次第、http://natsukote-info.blogspot.or.jpにて発表いたします)

5/22 (日) 地獄編
14:00~18:00(真ん中くらいで休憩を入れます)

予約・問合せ
http://natsukote-info.blogspot.or.jp

※ Asia Interactive Researchでは、
小金井アートスポット シャトー2Fにて来月から
月に一回、民俗芸能についての研究会を行います。
最終水曜日の13:00~15:30を予定しています。

助成:公益財団法人セゾン文化財団

2011/01/05

Asia Interactive Research 中間発表 vol.01

〜国や時代の枠組みを疑って芸能を観察する試み〜

終了しました。ご来場いただき大変ありがとうございました!

Researcher / 手塚夏子 神村恵 高嶋晋一 大澤寅雄 萩原雄太 奥村雄樹 若林里枝 小口美緒 白銀 尊 スズキクリ

2011122日(土)
14:00〜21:00 @ 森下スタジオ
入場無料(できるだけご予約下さい)

Asia Interactive Research とは?
Asia Interactive Researchとは、日本を始めアジアのアーティストが相互に関わる事を目指しつつ、今年から始動された民俗芸能、及び伝統芸能のリサーチです。国や時代の枠組みを疑い、枠組みをズラして観察する場としての「アジア」において、様々な現代のアーティストと交流し、それぞれの手法や視点から見た相互リサーチを誘発します。今回の中間発表においては、発案者である手塚夏子がインドネシアや韓国などで行った身体を伴うリサーチを軸に、他の様々な現代作家が行ういくつかのリサーチや問いを交差させます。アーティストどうしの創造的な関わりや、個々の創作への源泉となりうる脈動を見出すべく、野性的に散らかったリサーチとその報告が展開します。

手塚夏子|ダンサー/振付家
96年より、マイムからダンスへと以降しつつ、既成のテクニックではないスタイルの試行錯誤をテーマに活動を続ける。01年より自身の体を観察する『私的解剖実験シリーズ』始動。02年、私的な実験の小さな成果が「私的解剖実験-2」に結晶。同作品はトヨタコレオグラフィーアワードファイナリストとして同年7月に上演。人のダンスの手法について思考し体で試行する「道場破り」など、自主企画も多数。

神村恵|ダンサー/振付家
幼少よりバレエを学ぶ。04年よりソロ作品を発表し始め、以来、国内外の様々な場所で公演を行っている。06年より神村恵カンパニーとしても活動を開始。10年7月、トヨタコレオグラフィーアワード2010にファイナリストとして出場。10年11月、シアターグリーンにてカンパニー新作公演「飛び地」を行う。08年より、実験ユニットのメンバーとしても活動。

高嶋晋一|美術家
78年東京生まれ。パフォーマンスやヴィデオによるインスタレーションなどを制作・発表している。主な個展に「One foot on the
moon」(2005)、「These fallish things」(2008)など(以上、GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE、東京)。主なグループ展に「インターイメージとしての身体」(山口情報芸術センター、山口、2009)、「We Dance」(横浜市開港記念会館、2010)、「気象と終身ー寝違えの設置、麻痺による交通」(橋本聡との共同企画、アサヒアートスクエア、東京、2010)など。

大澤寅雄|文化生態観察
94年、慶應義塾大学(美学美術史専攻)卒業後、公共ホール・劇場の管理運営計画に携わる。03年、文化庁新進芸術家海外留学制度により、米国・シアトル近郊で劇場運営の研修を行う。05年より(株)ニッセイ基礎研究所にて主に文化政策やアーツマネジメントの調査研究を行う。NPO法人アートNPOリンク事務局、玉川大学および跡見学園女子大学非常勤講師。

萩原雄太|演出家/劇作家
83年、茨城県出身。演出家・劇作家。2007年より自身の演劇カンパニー「かもめマシーン」を主宰する。チェーホフの「かもめ」に着想を得た翻案劇「かもめ/マシーン」で、シアターX国際舞台芸術祭参加。また、他劇団への脚本提供など各種。主な受賞歴に「浅草キッド『本業』読書感想文コンクール」優秀賞。

奥村雄樹|美術家
78年青森県生まれ。物質・映像・言語といった異なるフレームがせめぎあう場として身体を捉え、その裂け目から別の時空間を立ち上げるような作品を展開、主にヴィデオやインスタレーションとして発表する。国内外で多くの展覧会に参加。7歳までの子供を対象としたワークショップ「くうそうかいぼうがく」(2008〜)、曽我部恵一との共作「本日は晴天なり」(2009)、笑福亭里光との共作「くうそうかいぼうがく・善兵衛の目玉」(2010)など、近年は他者と積極的に関わりながら多様なプロジェクトを展開する。

白銀 尊|建築家
04年 東京藝術大学美術学部建築科卒業後、建築設計,舞台空間設計に従事する傍ら、日本の伝統芸能独持の身体・空間表現に興味を持ち、同年より民間最古の歴史を持つ雅楽演奏団体である小野雅楽会に所属。舞楽の伝承に努めつつ身体感覚から発展した普遍的な空間表現を模索。11年現在 株式会社日建設計所属。09年日枝神社仲秋管絃祭、靖国神社秋季例大祭奉納舞楽、10年小野照崎神社雅楽の夕べ
に舞人として出演。

スズキクリ(音楽家)
演奏、作曲活動の他、演劇やビジュアルアート、ダンスなどとのコラボレーション多数。1996年アーティスト・ランの非営利団体「ART LAB OVA」を立ち上げ、横浜桜木町に拠点を開設。2010年横浜の多文化地域である若葉町に移転し、あいまいな店として「横浜パラダイス会館」をオープン。隣接する横浜唯一の独立系映画館シネマ・ジャック&ベティと連携するなど、地域性を生かしたアートプロジェクトを展開中。

2010/10/21

「中央」VS「ローカリティー」

インドネシアは、とにかく気候や人々の感覚が異国情緒を醸し出していましたが、韓国は、パラレルワールドに来てしまったのではないか、というくらいに近似して感じました。都市やテレビの内容はもとより、韓国の田舎に行ったのですが、その途中の風景も一見するとまるで日本の田舎ですが、よく見ると細部が違うのです。昔の家屋に行っても、非常に懐かしくて胸がキュンとなる感じがあって、よく見ると違うのです。

●韓国の書院文化
田舎に行った時に書院というところに行きました。それは、私学で、中央の政権とは対峙する立場にあるインテリな人たちがたまったり議論したりもするような場で、それが国の各地にあります。近代化したときに機能としてはなくなりました。しかし、韓国は基本的に中央に対する民衆の反骨精神が非常に強く、また意識も高いです。なので、常におかしいと思う事があれば反発します。し、歴史的に力があったようです。

●民衆の芸能
あと、仮面劇を見ました。これは、私が地元でやっているお囃子や花祭りの鬼が出ている場面にとても似ていて、つまり、中央的な芸能ではなく、民衆のために自治的に行われたものです。これが完全に観光化されているにも関わらず、物凄いエネルギーとお客さんに対する働きかけ、またその受け手の関係に、リアリティーがあり、かなり感動しました。音楽は体の底の方から血を沸き立たせるような力があった。まだこの芸能は生きていると思った。

書院、仮面劇共に、私にとって、今テーマとなっている
「中央」VS「ローカリティー」
の理想的な図で、この国のためではなく、自分たちのために学んだり芸能を立ち上げたりしているということです。日本でもじつは中世には本当に盛んだったし、その流れは江戸までは続いていました。

●日本の場合
ローカリティーのエネルギーは、自分の村の神様や、無縁の場にある信仰などがその後ろ盾となって、中央に対峙する自分たちのための芸能ではないだろうかと。日本でそれが完全に瓦解したのが明治の時、「国」の骨格がはっきりと提示されて宗教も「国家神道」に回収させられていった、つまり、全てが中央の下に入った。そうすると後ろ盾となる「おらが村の神様」の力がなくなり、中央に対峙する力もなくなり、芸能自体もリアリティーを失い、力を失うという流れだったのではないか?と思っています。今は国家神道はないけれど、圧倒的な資本のシステムがその代わりに回収しているという感じかもしれません。

●現在のローカリティについて考える
今の時代に、今の日本で、あるいは国という概念の外側で、某かの無縁の場を見出す事が可能か?マジョリティーに吸収されないもう一つのエネルギーを芸術のムーブメントに繋げる事は可能か?(手塚)

2010/10/13

Re: 国立劇場「アジアを結ぶ獅子たち」

神村さん
国立劇場の「アジアを結ぶ獅子たち」の報告、ありがとうございます。すごく興味深いですね。獅子を扱っているという共通項はあるものの踊り方も、ストーリーも、社会背景も、まったく違うのが面白いですね。
神村さんの観た演目を、YouTubeで検索してみました。韓国の水営野遊は見つからなかったです。残念。

法霊神楽(ほうりょうかぐら)

東北の神楽にはいろんな共通点があるように思うんですが楽器構成や音楽のリズムは早池峰神楽と似てますね。

早池峰神楽は、獅子頭じゃなくて、鳥兜をかぶるんですね。
あと、群舞になるところは、板沢しし踊りにも似てますね。

いま板沢しし踊りを改めてみたら、その動きが、なんとなく鳥屋の獅子舞にも似てるなぁ。

○テトの獅子舞(ムーラン)

この映像は神戸の長田でベトナム人のコミュニティが行ったベトナムのお正月の行事を記録したものですね。獅子舞のシーンは短いのですが、この正月の風習全体がおもしろいです。ここはたしかDANCE BOXはこの近くですね。

○連獅子

昭和45年の歌舞伎座での連獅子らしい。こんなのアップして松竹からクレームはこないのかな?7分15秒くらいから獅子が登場します。連獅子といえば頭を振り回す動きですが、思えばあれって日本の獅子舞というよりも、韓国の農楽を連想しますね。


ふーん。おもしろいねえ。(大澤)

2010/10/01

国立劇場「アジアを結ぶ獅子たち」

10月1日に、国立劇場でやっていた「アジアを結ぶ獅子たち」という公演を林真智子さんに誘われて見てきたので、遅くなりましたが、それについて少しご報告します。
獅子は聖獣として仏教の伝播とともに、インドから中国、日本と伝わってきたそうで、獅子を芸能に取り上げた「獅子舞」は日本だけでなくアジアの他の国でも行われているそうです。

公演では、
1 法霊神楽(ほうりょうかぐら)権現舞(ごんげんまい)…法霊神楽保存会(青森県八戸市)
2 水営野遊(スヨンヤリュ)両班の場・ヨンノの場・爺婆の場・獅子舞(サジャチュム)の場…水営野遊保存会(韓国 釜山廣域市)
3 テトの獅子舞(ムーラン)…ハンアンドン龍獅藝術團(ベトナム ホーチミン市)
4 連獅子…日本舞踊 花柳流
の4つが上演されました。

1 八戸市 法霊神楽 権現舞
まずはその由来について、パンフからの抜粋です。
インド、ネパール、韓国、中国、日本などでは獅子を家の守り神として奉る習慣があり、日本では獅子頭を「権現様」として崇める信仰も生まれた。権現というのは、仏が仮の姿となってあらわれたもの、です。
権現信仰は山伏によって広められ、東北地方に定着した。山伏神楽や番楽はこの「権現様」を中心に構成される。捩子さんも書いてたかもしれないけど、もとは修験(山伏)が行法の一環として演じていたそうです。岩手、青森の旧南部藩の地域では、獅子舞を「権現舞」と呼び、神楽の折だけでなく各戸を回って祈祷したりもする。
それで、実際上演したものについてですが、舞台の中央奥に獅子頭(権現様)が奉られている。上手に笛、太鼓、手平鉦の人たちが座っている。けっこう単純で力強いリズムと旋律がリピートで続けられる。中央で男の人が一人で舞を舞う。扇子や数珠を途中で扱う。旋回したり、時々飛び跳ねたり、男性的で重みのある感じの動き。しばらく踊ったら、中央に正面向きに正座してじっとしている。脇の人が出てきて奥にまつられている獅子頭を取って、舞い手の左手に持たせる。かぶらないで手に持ったまま。すぐには動き出さないで、少しずつ獅子頭と一緒に動き始める。回ったりする動きが多くなり、権現様を舞わせる。歯をカチカチ鳴らせる歯打ちもする。獅子頭から下がっている長い胴幕をくぐったり自分に巻き付けたりして、だんだん獅子と一体化してくるような感じ。また止まって、おもむろに獅子頭をかぶる。
※ 最初は神様に向かって踊り(下舞)、次は神様と共に踊り(前打ち)、だんだん重なってきて、最後は神様になる或いは憑依される、という段階が丁寧に踏まれているのがとても興味深かった。林さんによると、山伏というのは山の神と民衆を媒介する存在だったらしく、まさに山伏のあり方と重なるものでした。
獅子頭を被ると、花道から7,8人くらいの踊り手がそれぞれ獅子頭を持って現れ、歯をカチカチ鳴らせる動きを一斉に繰り返す。全員が獅子頭を被り、動きを続ける。頭を振ったり上下を大きく行き来したり、リズミカルで激しい動き。歯打ちの時は腕を高く伸ばして、獅子がそびえているような感じになる。舞い手は女性も混じってました。もとはきっと女人禁制だったのだろうけど。子どもも2人混じっていた。子供用に小さい頭を使っていた。子役が必要というより、伝承のためなんだろうなと思う。サーカスとか歌舞伎でもそうだけど、伝えるためには一緒に舞台に参加させるのが一番効率よいから?
権現頭を被って動いていても、まるっきり獅子になりきるというより、半分人間の存在が見え隠れしている感じでした。いわゆる普通の獅子舞は人間の姿を消して獅子になりきるようなもので、鳥屋の獅子舞は獅子の姿をまとった人間が踊っているものだとしたら、これはその中間という感じだった。

2 韓国釜山 水営野遊(スヨンヤリュ
野遊というのは伝統的な仮面遊びのことで、旧正月の夕方に村人が集まって楽しんだ村祭りの一形態です。派手な色彩の衣装を着て、出演者は大きい仮面を被っている。楽隊は太鼓とラッパみたいなのを演奏する。権現舞のときとは明らかに違う軽くて跳躍的なリズム。小芝居みたいな場面がいくつか続く。時々音楽と踊りが差し挟まれる。貴族階級の両班を風刺するもの、両班がヨンノという妖怪に食べられてしまうもの、あと面白さがよくわからなかったのが、爺と婆の話。家出した爺を婆が旅に出て探しあてるが、妾がいた。妾に嫉妬する婆は爺に叩かれ、結局死んでしまう。話がブラックすぎて突っ込みようがない感じがした。別に誰にも同情できない。韓国の人ならぐっとくるツボが何か、そこにあるのかもしれないと思った。
最後が獅子舞の場で、獅子の周りを虎がうろついて、怒った獅子に最後は食べられてしまう。獅子は2人の人が布の中に入って動いている。神様というよりライオンを模したもののよう。
全体的に、全てがざっくりしていた。演技の仕方、ストーリー、仮面や踊りも。気分を盛り上げて楽しむことが目的だからなのか。野遊には、遊戯的なものと祭儀的な性格のものがあるみたいで、儀式としてのものも見てみたいと思いました。

3 ベトナム テトの獅子舞(ムーラン)
旧正月(テト)を祝うために盛大に行う。宮廷では違うタイプの優雅な獅子舞があるようだが、これは民間に伝承される獅子舞で、武術集団によって演じられる。演じているのは武術をやっている(多分)若者たち。全身に房飾りのついた派手な衣装と大きい頭の中に2人が入って動く。目、耳、尻尾も操作して動かせるようになっていて、愛嬌を振りまいたりする。高いところからジャンプしたり、ひっくり返ったり、大きい球の上を歩いたり、細い棒が立ち並んでいる上をぴょんぴょん跳んで移動したり、スリリングな場面が展開される。曲芸として普通に面白かった。

4 日本舞踊の連獅子
能の「石橋」を歌舞伎化したもの。親獅子が子獅子を谷へ蹴落とし、子が駆け上がってくるか試す。前半は人間の父と子の姿で、時々右手に小さい獅子頭を持って舞う。間狂言を挟んで後半は、子が赤、親が白の長い髪のかつらを被って踊る。かつらをぐるぐる振り回したりするやつです。儀礼で行われている獅子舞と、そこまで関連性はないけど、面白いと思ったのは、前半では獅子頭を持ちつつ、人間を獅子と見立てるようにしていて、後半は獅子になって踊る、という構成でした。
そこに現前していなくても、表されているものが完全な姿をしていなくても、表すものと表されているもののギャップを補って見られる習性みたいなのが日本にはあるのかなーとか思ったり。

獅子舞と一口に言っても、担わされている役割が国によって全然ちがうのが分かるプログラムでした。権現舞はもう少し機会があれば見てみたい。

以上のような感じです。(神村)